骨盤裂離骨折




- 長時間座れない
- 日常動作の制限
- スポーツ復帰が不安
- 歩行時の強い痛み
- 運動中の激しい痛み
骨盤裂離骨折(Pelvic Avulsion Fracture)は、骨盤の一部に付着している筋肉や腱が強い牽引力によって骨の一部を引き離すことで発生する骨折です。この骨折は、特に若年の運動選手や成長期の子供に多く見られます。
骨盤裂離骨折について|上尾市-久喜市-さいたま市北区土呂/宮原すぎやま鍼灸整骨院
骨盤裂離骨折とは何か?:成長期の骨が持つ特有の「弱点」

骨盤裂離骨折とは、筋肉の急激な収縮力によって、骨盤の一部が引き剥がされてしまうという特殊な骨折です。一般的に「剥離骨折」とも呼ばれます。
この外傷が特に厄介なのは、強い筋力を持つ中学生・高校生のアスリートに集中して発生する点です。サッカー、陸上競技、野球など、股関節周りの筋肉を一瞬で強く使うスポーツで多く見られます。多くの選手が「ただの肉離れだろう」と自己判断しがちですが、実際には骨の損傷であり、初期の対応を誤ると競技復帰が大幅に遅れるリスクがあります。
なぜ成長期に起こるのか?|上尾市-久喜市-さいたま市北区土呂/宮原すぎやま鍼灸整骨院
この骨折が成長期に特有なのは、まだ骨が未成熟であることに原因があります。成長期の骨には、骨が伸びるための骨端線という柔らかい部分が残っています。
この骨端線は大人の骨よりも強度が非常に低いため、太ももやお尻の筋肉が一瞬で最大級の力を発揮した際、筋肉や腱よりも先に、骨の付着部がこの弱い部分で耐えきれなくなり、「ブチッ」と剥がれてしまうのです。筋肉の力が骨に勝ってしまうという現象です。
発生しやすい部位と、その時の「サイン」
骨盤には強力な太ももの筋肉や体幹の筋肉が集まっているため、裂離骨折は様々な箇所で発生します。どの部位が折れるかによって、痛む場所や動作が異なります。
骨盤裂離骨折が起こる場所は、どの筋肉が急激に強く収縮したかによって異なります。このため、痛みが最も強くなる動作を確認することで、どの部位が損傷したかを推測することができます。
下前腸骨棘
骨盤の前方にある部分で裂離骨折が発生した場合、これは主に大腿直筋、つまり太ももの前面にある大きな筋肉の牽引によるものです。したがって、症状としては股関節を深く曲げる動作、あるいは膝を強く伸ばす動作を行ったときに、その筋肉が最大限に引っ張られ、激しい痛みとして現れるのが特徴です。
坐骨結節
一方、お尻の下にある大きな出っ張りである坐骨結節での裂離骨折は、主にハムストリングスの強力な収縮によって引き起こされます。この部位を損傷している場合、股関節を伸ばす動作(足を後ろに蹴り出す動作)で強い痛みを訴えることが多く、特に太ももの裏側をストレッチしようとして筋肉が最大限に引き伸ばされたときに、耐え難い痛みが伴います。
このように、どの筋肉が骨を剥がしたかによって、日常動作やスポーツ動作における痛みの出方が明確に異なり、これが診断の手がかりの一つとなります。
受傷した瞬間、多くの場合、股関節や臀部(お尻)に「パキッ」あるいは「ビシッ」という音や感覚を伴う突然の激しい痛みが走ります。この痛みのため、その後の運動を継続することは不可能になり、重症例では片足に体重をかけて歩くことすら困難になります。
早期復帰のための注意点|上尾市-久喜ーさいたま市北区土呂/宮原すぎやま鍼灸整骨院
骨盤裂離骨折は、適切な治療を受ければ後遺症なく競技復帰が可能です。しかし、自己判断による無理な早期復帰は絶対に避けるべきです。
一般的に、骨が完全にくっつくまでには数週間から数ヶ月の安静期間が必要です。大切なのは、「痛みが消えたこと」ではなく、「骨が完全に癒合したこと」です。焦る気持ちは理解できますが、専門家と連携し、定められた復帰プロセスを守ることが、長期的な競技人生を守る最も確実な道です。
骨盤裂離骨折をされたあなたへ
この度は、激しい運動の中でつらい思いをされていることとお察しします。骨盤裂離骨折は、特に成長期のアスリートに多い特有のケガです。しかし、適切な手順を踏んで治療すれば、後遺症なくスポーツに復帰できるケガでもあります。
1. 骨折を正しく理解し、「焦らず休む」
このケガは、あなたが日々のトレーニングで筋肉を一生懸命使い、爆発的な力を発揮した結果として、まだ弱い骨端線(成長軟骨)が耐えきれずに剥がれてしまった状態です。決して「不注意」なケガではありません。
しかし、回復の道筋において、何よりも重要なのは「安静」です。
- 剥がれた骨片を動かさないようにすることが、骨が早く、そしてきれいにくっつくための絶対条件です。
- 痛みが引いても、骨が完全に癒合するまでは運動は厳禁です。無理をして動かすと、骨片のズレが大きくなったり、治癒が大幅に遅れたりするリスクが高まります。
2. 復帰の鍵は「段階的なリハビリ」にある
骨がくっついたと医師に診断された後が、あなたの競技人生にとって最も大切な時期です。
- 柔軟性の回復: 長期間の安静で硬くなった股関節周りの筋肉や関節を、専門家の指導のもと、慎重かつ徹底的にほぐし、柔軟性を取り戻します。
- 筋力の再構築: 骨折の原因となった体の使い方やフォームの癖を見直し、特定の筋肉に負担が集中しないよう、体幹やインナーマッスルから段階的に筋力を強化していきます。
単に骨を治すだけでなく、ケガをしにくい、より強い体へと作り変えるのがこのリハビリ期間です。再発を防ぎ、以前よりも高いパフォーマンスで復帰するために、リハビリの指導にしっかり取り組みましょう。
焦らず、一歩一歩、治癒のプロセスを大切にしてください。

















